
プログラミング教室に限らず、子どもを対象にした教育の現場では、ちょっとした声かけや言葉の選び方が、子どもの心に大きく影響します。
意図していなかったとしても、「自分はダメなんだ」「ここにいるのがこわい」と思わせてしまう言葉もあります。
これは、子どもの理解力が足りないということではなく、言葉の捉え方が大人とは違うためです。
とくに小学1〜2年生など、発達の初期段階にいる子どもは、まだ自分の気持ちを整理して言語化することが難しく、ちょっとした語調や言い回しに敏感です。
この記事では、発達途上の子どもたちに寄り添うための「やさしい声かけのマニュアル」をご紹介します!

すぐに現場で使える具体例を交えながら、「子どもを傷つけない」ための行動のヒントをお伝えします。
子どもにとっての「ことば」の重み
子どもはまだ語彙が少なく、感情や経験を正確に言葉で表すことが難しい存在です。そのため、大人の言葉を“そのまま受け止める”傾向があります。
たとえば、「そんなことも知らないの?」というひとこと。大人同士では軽い冗談のつもりでも、子どもには「自分はできないんだ」と感じさせてしまうこともあります。
心理学では、こうした「自分にはできそうだ」という感覚を自己効力感と呼びます。この感覚が傷つけられると、挑戦する意欲や学ぶ楽しさが失われてしまいます。

“どうせムリ…”って言う子の陰には、ちょっとした言葉の傷があることも
見えにくい“傷”を防ぐために
子どもの心はとても柔らかくて、ちょっとした表情や語気の変化にも敏感です。
とくに指導中は、子どもにとって集中力が必要な場面で、感情が不安定になりがち。
そこで、やさしい声かけがとても大切になります。
ここで意識したいのは、「叱らない」ことではなく、「伝わる言葉を選ぶ」こと。
注意をするときでも、子どもが “人格を否定された”と感じない言葉選びができれば、信頼関係は崩れません。
子どもを傷つけないための7つの声かけマニュアル
具体的な声かけの例を、7つご紹介します!
「ちがうよ!」の代わりに、提案を
❌ よくある例(キツくないけどNG)
「うーん、それじゃないよ〜」
「それ、ちがうよ!」
✅ 改善例
「すごく近いね!あとちょっとでできそうだよ」
「ここをこうしてみたら、もっとよくなるかも」
ポイント
“まちがってる”という言葉を避け、「できそう」や「工夫しよう」といったポジティブな表現にするだけで、子どもは前向きになります。
命令よりも、一緒に考えるスタンスを
❌ よくある例
「ほら、これやって〜」
「早く次やって、時間ないよ」
✅ 改善例
「どこがむずかしい?一緒ににやってみよう」
「どうすればうまくできるか、一緒に考えよ」
ポイント
急かすことで手は動いても、子どもの心が止まってしまうこともあります。
注意は “問いかけ” 形式で
❌ よくある例
「そこ、なんでそうしたの?」
「どうして、こっちにしたの?」
✅ 改善例
「このやり方を選んだの、理由は何かな?」
「もう一つやり方があるけど、見てみる?」
ポイント
“どうして?”って言われると、子どもは責められている気持ちになることも。
「ちゃんとやって」は意味があいまい
❌ よくある例
「ちゃんとやって!」
「ちゃんとして」
✅ 改善例
「ゆっくりでいいから、一つずつやってみよう」
「このあたりをもう少し丁寧にしてみようか」
ポイント
“ちゃんと” は、具体的じゃないため伝わりにくいことも。行動の内容を具体的に伝えると、わかりやすいです。
同じことを聞かれても、繰り返しOKの姿勢で
❌ よくある例
「さっき言ったよね」
「前も教えたと思うけど」
✅ 改善例
「大事なとこだから、もう一回説明するね」
「聞き直してくれてうれしい、忘れでも大丈夫だよ」
ポイント
“聞いていいんだ”ってわかると、子どもはどんどん質問してくれるようになります。
必要な注意をしたあとは“関係修復”を
❌ よくある例
(注意したあとに無言で次の行動に移る)
✅ 改善例
「ちょっと強い言葉に聞こえたかな。でも、がんばってたの見てたよ。」
「うまくいかなくてくやしかったね。一緒に考えてくれてありがとう。」
ポイント
注意したあとこそ、フォローの言葉で “信頼” を戻すことが大事です。
まとめ:子どもが安心して学べる空間をつくろう
子どもにとって、“ことば” は大人以上に大きな意味を持っています。
教室での声かけひとつで、子どもが自信を持ったり、不安になったりします。
だからこそ、
・ 叱るのではなく、理解を深めるために声をかける
・ 命令ではなく、問いかけや提案を使う
・ 結果ではなく、プロセスに注目して伝える
このような接し方を教室全体で共有することで、子どもたちはもっと安心してチャレンジできるようになります。

“伝える” は技術。
“伝わる”は信頼。
信頼のある教室は、声かけから始まります!